位相空間において、異なる点や集合を開集合によってどの程度区別できるかを表す条件を分離公理という。
代表的な分離公理には T0,T1,T2 などがある。
異なる任意の2点 x,y に対して、一方を含み他方を含まない開集合が存在するとき、X を T0 空間という。
異なる任意の2点 x,y に対して、
x∈U,y∈/U
となる開集合 U と、
y∈V,x∈/V
となる開集合 V が存在するとき、X を T1 空間という。
これは、すべての一点集合
{x}
が閉集合であることと同値である。
異なる任意の2点 x,y に対して、互いに交わらない開近傍 U,V が存在し、
x∈U,y∈V,U∩V=∅
となるとき、X をハウスドルフ空間または T2 空間という。
ハウスドルフ空間では、収束する点列の極限は一意である。
一般に、
T2 ⟹ ならばT1 ⟹ ならばT0
が成り立つ。
分離公理は、20世紀初頭に一般位相空間の理論が形成される中で導入された。
特にハウスドルフは1914年の著作で位相空間の公理化に大きく貢献し、異なる点を互いに素な近傍によって分離できる条件は現在ハウスドルフ性と呼ばれている。
その後、より弱い条件や強い条件が体系化され、T0,T1,T2 などの階層として整理された。
任意の距離空間 (X,d) はハウスドルフ空間である。
x=y とし、
r=3d(x,y)
とする。
開球 B(x,r) と B(y,r) は互いに交わらないため、x,y を分離できる。
集合 X に密着位相
{∅,X}
を入れ、X が2点以上を持つとする。
異なる点を開集合によって区別できないため、この空間は T0 ですらない。
ハウスドルフ性は極限の一意性を保証する。
また、ハウスドルフ空間ではコンパクト部分集合が閉集合になるなど、解析や幾何で重要な性質が得られる。
多様体の定義でも通常ハウスドルフ性が要求される。
距離空間 (X,d) がハウスドルフ空間であることを示せ。
異なる点 x,y∈X を取る。
d(x,y)>0
なので、
r=3d(x,y)>0
とする。
もし
z∈B(x,r)∩B(y,r)
なら、三角不等式より、
d(x,y)≤d(x,z)+d(z,y)<2r=32d(x,y)
となり矛盾する。
したがって、
B(x,r)∩B(y,r)=∅
である。
よって X はハウスドルフ空間である。