有理型関数 f の零点と極の個数は、対数微分
f(z)f′(z)
を積分することで求められる。
f が点 a に m 位の零点を持つとする。このとき、
f(z)=(z−a)mg(z)
と書ける。ただし g(a)=0 である。
したがって、
f(z)f′(z)=z−am+g(z)g′(z)
となるので、
Res(ff′,a)=m
である。
一方、a が m 位の極ならば、
Res(ff′,a)=−m
となる。
したがって、単純閉曲線 C 上に零点も極もなく、その内部で f が有理型であるならば、
2πi1∮Cf(z)f′(z)dz=N−P
が成り立つ。
ここで N は C の内部にある零点の個数、P は極の個数であり、それぞれ重複度を含めて数える。
この結果を偏角の原理という。
零点と極を積分によって数える考え方は、19世紀に発展した複素関数論の重要な成果の一つである。
コーシーの積分論と留数理論によって、関数の局所的な零点・極の情報と閉曲線上の積分を結びつけられるようになった。
偏角の原理はさらにルーシェの定理へつながり、複素領域内に存在する方程式の解の個数を直接解くことなく判定するために利用される。
f(z)=(z−i)3(z−1)2(z+2)
とする。
十分大きな円の内部では、零点は
z=1,z=−2
であり、重複度を含めると
N=2+1=3
である。
一方、z=i は3位の極であるから、
P=3
となる。
したがって、
N−P=0
である。
零点の「異なる点の個数」と「重複度を含めた個数」は同じとは限らない。
例えば、
f(z)=(z−1)3
は零点としての点は z=1 の1個だけであるが、偏角の原理では3位の零点として
N=3
と数える。
偏角の原理を用いることで、複素方程式の解を明示的に求めなくても、指定された領域内の解の個数を調べられる。
特にルーシェの定理は偏角の原理から導かれ、多項式や正則関数の零点の個数を判定するために広く利用される。
また、偏角の原理は代数学の基本定理の複素解析的証明にも関連する。
f(z)=z+2(z−1)2
について、円
∣z∣=3
の内部にある零点と極の個数を重複度を含めて求め、
2πi1∮∣z∣=3f(z)f′(z)dz
を求めよ。
f は z=1 に2位の零点を持つので、
N=2
である。
また、z=−2 に1位の極を持つので、
P=1
である。
どちらも ∣z∣<3 に含まれる。
したがって偏角の原理より、
2πi1∮∣z∣=3f(z)f′(z)dz=N−P=1
である。