行列式(determinant)
正方行列 A=(aij) に対して定義される交代和
detA=σ∈Sn∑(sgn(σ)i=1∏nai,σ(i))
を A の行列式といい、
detAまたは∣A∣
と表す。
acbd=ad−bc
a11a21a31a12a22a32a13a23a33
は、
=a11a22a33+a12a23a31+a13a21a32−a13a22a31−a12a21a33−a11a23a32.
行ベクトルを a1,a2,…,an とすると、任意の置換
σ∈Sn に対して、
detaσ(1)aσ(2)⋮aσ(n)=sgn(σ)deta1a2⋮an.
同様に、
det(aσ(1),aσ(2),…,aσ(n))=sgn(σ)det(a1,a2,…,an).
また、
detA=detA⊤,
det(AB)=detAdetB.
A が正則なら、
det(A−1)=(detA)−1.
小行列式・余因子・余因子行列
(minor determinant, cofactor and adjugate matrix)
行列 A の第 i 行と第 j 列を除いて得られる行列を、
その位置 (i,j) に対応する小行列といい、Aij などと表す。
A が正方行列であるとき、小行列 Aij の行列式
detAij
を小行列式という。
位置 (i,j) に対応する余因子を
Cij=(−1)i+jdetAij
と定義する。
余因子を並べた行列
C=(Cij)
の転置
adj(A)=C⊤
を A の余因子行列という。
すなわち、
adj(A)=((−1)i+jdetAij)⊤.
Aij だけでは何を指しているのか分かりにくいため、
「小行列 Aij」などと明記することがある。
小行列を Mij と表すこともある。
行列と同じく、小行列そのものは行数と列数が一致している必要はない。
一方、その行列式である小行列式は正方行列に対してのみ定義される。
例えば、
A=a11a21a31a12a22a32a13a23a33a14a24a34
から第 2 行と第 3 列を除くと、
A23=(a11a31a12a32a14a34)
を得る。
A=(acbd)
ならば、
adj(A)=(d−c−ba).
正則行列 A に対して、
A−1=detA1adj(A).
特に、
A=(acbd)
ならば、
A−1=det(acbd)1adj(acbd)=ad−bc1(d−c−ba).
正方行列 A に対し、正則行列 P を用いて
P−1AP
が対角行列になるとき、A は対角化可能であるという。
固有値・固有ベクトル・固有方程式・固有多項式
(eigenvalue, eigenvector, characteristic equation, characteristic polynomial)
正方行列 A に対して、
Ax=λx
を満たすスカラー λ と零ベクトルでないベクトル
x が存在するとき、
λ を A の固有値、
x を固有値 λ に関する固有ベクトルという。
単位行列 In を用いると、
Ax=λInx
なので、
(A−λIn)x=0
と書ける。
この連立一次方程式が非自明解
x=0
を持つための必要十分条件は、
det(A−λIn)=0
である。
この方程式を A の固有方程式という。
また、
pA(λ)=det(λIn−A)
または符号の流儀によって
pA(λ)=det(A−λIn)
を A の固有多項式という。
固有空間(eigenspace)
行列 A の固有値 λ に対して、
Eλ={x∣Ax=λx}
とおく。
これは、
Eλ=Ker(A−λIn)
と書くこともできる。
Eλ はベクトル空間の部分空間をなし、
これを固有値 λ に対応する固有空間という。
なお、固有ベクトルそのものの集合は零ベクトルを含まないため、
厳密にはそれだけでは部分ベクトル空間ではない。
ケイリー・ハミルトンの定理(Cayley–Hamilton theorem)
n 次正方行列 A の固有多項式を pA(t) とすると、
pA(A)=O
が成り立つ。
すなわち、任意の正方行列は自分自身の固有多項式を満たす。