$D$ を単連結領域、$C$ を $D$ 内の区分的に滑らかな単純閉曲線、$f$ を $D$ 上の正則関数とするとき
$$\doint_C f(z)\dd z = 0$$が成り立つ。1
- 単なる「領域」ではなく「単連結領域」でなければならない理由は?
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多重連結領域をそのまま積分しようとすると、積分値が $0$ にならない。例えば、以下のような例が挙げられる。
$f(z)=\dfrac1z,\, D=\C\setminus \qty{0}$ とするとき、$$\doint_C f(z)\dd z = \doint_{\C\setminus \qty{0}} \frac1z = 2\pi\i \neq 0$$
定理を多重連結領域へ応用するには、積分経路を単連結領域の和集合に書き換える必要がある。
- 「単純閉曲線 $C$ で囲まれた領域 $D$ 上の正則関数を $f$ とするとき、$$\doint_C f(z)\dd z = 0$$が成り立つ。」という形とどう違う?
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2つの積分経路 $C$ と扱う領域 $D$ を数式にすると、$$C \subseteq D,\, C=\partial D \subseteq D$$となる。
つまり、$C$ が $D$ の境界以外も積分経路として取り得るか、境界しか選べないかという違いがあるため、コーシーの積分定理 $\implies$ 「単純閉曲線 $C$ で囲まれた領域 $D$ 上の正則関数を $f$ とするとき、$\doint_C f(z)\dd z = 0$が成り立つ。」
が成り立つ。この弱形においては、単連結領域を仮定していないが、ジョルダンの閉曲線定理によって、単純閉曲線で囲まれた領域は単連結領域になる。
- 単純閉曲線でなければならない理由は?
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単純閉曲線とは、いわば “普通の曲線” を指す。「始点と終点が一致していて自己交差のない曲線」というのが複素積分の積分経路における “スタンダード” なのである。
またこの定理は積分経路となる曲線(円形に近いものを想像してほしい)を拡大縮小しても積分値が変わらないことを導くので、自己交差していないことが必須の条件になる。
グリーンの定理を用いて証明することができる。 - $D$ が正則でない点を含む関数である場合は、どのように積分値を計算するの?
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そのような “正則ではない点” を孤立特異点と呼ぶ。孤立特異点を含む複素関数の積分は留数および留数定理を用いることで計算できる。
$\qquad \doint_{C}{f(z)\dd z}$
$\qquad = \doint_{C}{\bigl( \Re f(z) + \i \Im f(z) \bigr) \dv z{t}\dd{t} }$
$\qquad = \doint_{C}{\bigl( \Re f(z) + \i \Im f(z) \bigr) \left(\dv{x}{t} + \i \dv{y}{t} \right) \dd{t} }$
$\qquad = \doint_{C}{\bigl( \Re f(z) + \i \Im f(z) \bigr) \dd{x} } + \doint_{C}{\bigl( \Re f(z) + \i \Im f(z) \bigr) \i \dd{y} }$
$\qquad = \doint_{C}{\bigl( \Re f(z) + \i \Im f(z) \bigr) \dd{x} } + \doint_{C}{\bigl( \i \Re f(z)-\Im f(z) \bigr) \dd{y} }$
$\qquad = \doint_{C}{\bigl( \Re f(z)\dd{x}-\Im f(z) \dd{y} \bigr) } + \i \doint_{C}{\bigl( \Re f(z)\dd{y} + \Im f(z)\dd{x} \bigr) }$
グリーンの定理より、
$\qquad = \diint _{D}{\left(-\pdv{\Im f(z)}{x}-\pdv{\Re f(z)}{y} \right) \dd{x}\dd{y}} + \i \diint _{D}{\left( \pdv{\Im f(z)}{y}-\pdv{\Re f(z)}{x} \right) \dd{x}\dd{y}}$
$\qquad =-\diint _{D}{\left( \pdv{\Im f(z)}{x} + \pdv{\Re f(z)}{y} \right) \dd{x}\dd{y}} + \i \diint _{D}{\left( \pdv{\Im f(z)}{y}-\pdv{\Re f(z)}{x} \right) \dd{x}\dd{y}}$
コーシー・リーマンの方程式より、
$\qquad =-\diint _{D}{0 \times \dd{x}\dd{y}}+\i \diint _{D}{0 \times \dd{x}\dd{y}}$
$\qquad = 0. \ \Box$
- 正則関数の周回積分の値は $0$ になるのに対して、正則でない点(特異点)を持つ複素関数の周回積分の値は $0$ にならない。その中でも、孤立特異点を持つ複素関数の周回積分の値は特殊であり、留数定理によって示される。 ↩︎
