逆三角関数とは
逆三角関数は、
- $y=\arcsin x \quad \qty(- \dfrac\pi2 \leq y \leq \dfrac\pi2,\, -1 \leq x \leq 1)$
- $y=\arccos x \quad \qty(0 \leq y \leq \pi,\, -1 \leq x \leq 1)$
- $y=\arctan x \quad \qty(- \dfrac\pi2 \leq y \leq \dfrac\pi2,\, – \infty \leq x \leq \infty)$
によって定義される。
だが、一般角を定義域とした三角関数に対して、逆三角関数を定義することはできない。
この記事では、なぜ逆三角関数は「一般角に対して定義できないのか」を解説する。
なぜ $\arcsin$ は逆関数ではないのか
専門的には、「逆三角関数が多価関数だから全単射ではない」から、「全単射でないと逆関数も存在しない」という理由になる。これを高校数学における三角関数に当てはめて、$\sin$ を例に解説する。
多価関数とは
$x$ に対して、複数の値 $f(x)$ が定まる関数を多価関数と呼ぶ。。例えば、
$\cdots = \sin(-\pi) = \sin0 = \sin\pi = \cdots = 0$
より、
$\arcsin0 = 0,\, \pm\pi,\, \pm2\pi,\, \cdots = n\pi\ (\text{$n$ は整数})$
となる。
全単射とは
次は全単射について。全単射とは、全射かつ単射であるようなものを指す。
「すべての $y$ に対して、$f(x) = y$ となるような $x$ が必ず定まる」ような関数を全射と呼ぶ。$\sin$ のグラフから見てわかるように、$\arcsin$ はすべての角度 $\arcsin x$ に対して $x$ が定まる。
「$f(x) = f(y)$ ならば $x = y$」となるような関数を単射と呼ぶ。$\sin0 = \sin\pi = 1$ となるが、 $0$ と $\pi$ は異なる角度だから、$0 = \pi$ とはならない。
よって、$\arcsin$ は全射だが単射ではない(全単射ではない)関数であるので、$\arcsin$ は $\sin$ の逆関数ではない。
$\arcsin$ を逆関数にするために
そのためには、$y = \sin x$ の値の取りうる範囲 $-1 \leq y \leq 1$ に対応して、$y = \arcsin x$ の定義域は $-1 \leq x \leq 1$ となる。問題は $\arcsin x$ の定義域の方である。
$\arcsin$ が多価関数でなくなれば、$\arcsin 0$ は複数の値を取らなくなる。そのためには、$0$ と $\pi$ が定義域に含まれていなければよい。さらに、$\arcsin x$ の値が等しくなってしまうような $x$ をすべて除く必要がある。$\sin$ 関数のグラフを見て、繰り返されているのは、$\minus 1 \leq y \leq 1$ の部分であるので、
$\arcsin 1 = \dfrac{\pi}{2} + 2n\pi,\, \arcsin (-1) = -\dfrac{\pi}{2} + 2n\pi\ (\text{$n$ は整数})$
となる。一般的には $0$ を含む最小のものを定義域とする場合が主である。よって、このような $\sin x$ の定義域は $-\frac{\pi}{2} \leq x \leq \frac{\pi}{2}$ となる。
よって、$y = \arcsin x$ は $-1 \leq x \leq 1,\, -\frac{\pi}{2} \leq y \leq \frac{\pi}{2}$ における $x = \sin y$ の逆関数として定義できる。
また、$\arcsin x$ の値の取りうる範囲を $-\frac{\pi}{2} \leq y \leq \frac{\pi}{2}$ に限定したが、このように「値が一つに定まるような $x$ の範囲」を主値と呼ぶ。
$\arccos$ と $\arctan$ も同様に主値を定めることで解決する。
